トップメッセージ
技術者の成長を支援し、
“経済的価値”と“社会的価値”を
両輪で創造してまいります。

2024年10月期の振り返り
昨年の日本経済は、円安による物価上昇の影響などから一部景気に足踏みが見られたものの、雇用や所得環境の改善などを背景に緩やかな回復が続きました。当社グループが技術者を派遣する建設業界についても、公共投資の底堅い推移と民間設備投資の持ち直しの動きがみられたことから、需要は堅調に推移しています。他方で、採用環境は厳しさを増しており、加えて建設業界への時間外労働の上限規制が2024年4月に適用されたことから、当業界における人手不足の問題はより深刻化しています。そのため、技術者派遣に対するニーズは今後更に高まっていくと想定されます。
このように市場環境が追い風になる中で、当社グループは積極的な採用活動と営業活動を進めたことから、在籍人数と契約単価を順調に伸ばすことができ、2024年10月期は大幅な増収・増益を達成することができました。売上収益は、216億円と、23年10月比に対して20%の増収となり、高い成長を維持しています。また営業利益は販管費の抑制が寄与し、31億円となり、26%の増益となりました。
成果と課題
業績全体は、大幅な増収・増益となり、過去最高を更新する結果となりましたが、成果と課題が混在しています。
まず、建設ソリューション事業の営業面においては、契約単価の底上げが成果となりましたが、キャリア技術者や女性技術者の派遣先を安定的に確保できず、稼働率が低下する結果となりました。採用面においては、積極的な採用費投下が寄与し、採用数が伸長した反面、採用コストは年々上昇しており、採用費の抑制は大きな課題ととらえています。技術者を支援するキャリアデザイン面においては、資格取得支援などの施策実行と新人フォロー体制の整備が進みました。しかしながら、当社グループの課題である退職率の低減については目標値に届かない結果となりました。引き続き離職懸念の技術者に対する支援強化を進めていきます。
ITソリューション事業においては、大規模案件の獲得や退職率の改善などの成果もありましたが、上流工程案件の獲得数や稼働率については課題を残しています。
市場の追い風を取り込み、持続的な成長へ
建設業界は今後も底堅い需要が見込まれておりますが、人手不足は継続することは明らかであり、技術者派遣に対するニーズは更に高くなると想定しています。重要なことは、この追い風をしっかりと取り込み、持続的な成長につなげていくかです。「顧客需要に応える人材の安定的な確保」、ならびに「技術者の退職率の改善」という2点に重点的に取り組むことで、2025年10月期の売上収益は前期比19%の増収となる256億円の達成を目指します。また、当期は、将来的な採用人数と稼働人数の拡大に向けて、積極的に投資をおこなう一年とします。具体的には、自社採用メディアの強化、技術者の育成支援、営業・採用部門の体制強化などを想定しています。そのため、営業利益は前期比6%の増益となる33億円で計画しています。
当期計画の達成とともに、次年度以降の持続的な成長に向けた当期の取り組みは、以下の4点です。
- 「営業」「採用」「キャリアデザイン」各プロセスの機能強化
重点取り組み事項の1つ目は、「営業」「採用」「キャリアデザイン」それぞれのプロセスの機能強化を図ることで、「稼働率の改善」と「退職率の低下」を目指すことです。営業面については、前期の課題となったキャリア技術者・女性技術者の派遣先の安定確保に向けて営業を強化していきます。採用面では自社採用メディアの強化を通じて、「採用数拡大」と「採用単価の抑制」を進めていきます。技術者のキャリアデザインについては、退職率の低減に向けて「営業部門」「採用部門」との協業体制を構築し、未経験技術者の業務上での課題やキャリアの相談ができる環境整備を推進します。 - 自社採用メディア(セコカンNEXT)の育成強化
重点取り組み事項の2つ目は、自社採用メディアの育成強化です。積極的な投資により、自社採用メディアである「セコカンNEXT」の育成を図るほか、ダイレクトリクルーティングなどの採用手法を強化することで、当期については採用人数2,000人規模を目指します。また、自社採用メディアやダイレクトリクルーティングの採用割合を将来的に高めることで、採用単価の抑制につなげる計画です。 - 建設DX支援など新規サービスの展開を加速
重点取り組み事項の3つ目は、新規サービスの展開です。前期の取り組みをベースに、建設DX支援サービスの展開を加速する計画です。当期については、支援件数の拡大に向けて、研修内容を充実させるほか、コンサルタントや支援員の養成を強化し、複数人の編成によるチーム派遣を進めていきます。 - 中期経営計画の策定
重点取り組み事項の4つ目は、中期経営計画の策定です。当社グループのありたい姿と環境分析を踏まえて、事業戦略のみならず、事業の根幹である人的資本、それらを支える財務・投資について議論し、中期経営計画を策定していく予定です。中期経営計画の開示時期は現時点で確定しておりませんが、当期中に開示したいと考えております。
技術者の育成支援を、成長の推進力に
技術者人材の獲得は当社グループの成長の推進力にほかなりませんが、一人ひとりの技術者の成長がそこに加わることができれば、成長スピードをさらに高めることが可能だと考えております。技術者の「成長したいという熱量」こそが事業の「伸びしろ」ですので、しっかりとその気持ちを後押しすることが会社の役割です。
建設ソリューション事業の中核会社であるワールドコーポレーションでは、技術者が継続的に成長できる体制の構築に向けて、昨年の5月にキャリアデザイン支援制度「ゼロプロ成長サイクル」を掲げました。プログラムの一環として、資格取得を目指す派遣技術社員を対象に試験対策講座を新設した結果、当初計画を大きく上回る施工管理技士補の合格者を出すことができました。直近も多くの技術者から資格取得講座への参加要望が届いています。今後も技術者の成長に向けて、多角的な支援を行ってまいります。
誰もが「プロ人材に、なれる」会社を目指す
技術者の高齢化はなお進んでおり、プロ人材の不足という業界課題はさらに深刻化しています。しかし、建設業界は我が国のGDPの1割を担う巨大産業であり、大きい建物を職人さんたちの力を借りながら、長い時間をかけて作っていく達成感や、国土のインフラを作っていくという社会的使命を感じられる、非常にやりがいがある仕事です。我々の存在意義は、この業界の「すばらしさ」や「やりがい」を若い世代に伝え、興味を引き付け、そして、プロ人材として育成することで、1人でも多くの若い人材に将来の建設業界を担ってもらうことだと思っています。そのためにも、スキルをもった技術者を育成し、現場で戦力化することでお客様への価値提供を図ると同時に、社員にとってもスキルを伸ばすことで働きがいを持ち、人生を豊かなものにしていって欲しいと考えております。
ステークホルダーの皆さまには引き続きご支援賜りたく、心よりお願い申し上げます。
2025年1月30日
